夫は手術を受けた病院での治療を終えて約15日、次にリハビリテーションの病院に転院しました。左半身が麻痺状態でした。左足の足首から弛緩性麻痺で足底をつけることができず、左腕も不随意運動を起こしていました。しゃべることはできましたが思考回路が途切れている感じでした。神経機能は回復しているようでしたが、脳はいわゆる高次脳機能障害が進んでいたようです。
高次脳機能障害とは脳梗塞などが原因で脳が部分的に損傷を受けた後に起こる障害です。何度も同じことを繰り返して聞く記憶障害、感情のコントロールができなくなる感情障害、集中力がなくなり簡単な作業でもできなくなる注意障害などがあります。
約2か月のリハビリテーションで本人の努力とリハビリスタッフのおかげで退院前にはなんとか立つことができるようになりました。
まだ一人で歩くことはできませんでしたが、右手の握力が回復することによって、歩行する際には手すりを持つことができるようになり、手すりを伝うことでゆっくり歩くことできるようになりました。また食事も箸を使って一人でできるようにもなりました。
このように外見上からは順調に身体機能が回復しているように見えたため、高次脳機能障害が進行していることは周囲にもわかりませんでした。私が見舞いに行き看病しているときはとくに目に見える大きなトラブルを起こしてはいませんでした。したがって私もそれに気づくことはありませんでした。ところが病魔はゆっくりと夫の脳をむしばんでいました。そして2か月が経ったとき在宅ケアもできると見込んで退院に至ります。(しかし。この高次脳機能障害が後に大きな問題を起こすことになります)。
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