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①突然の介護生活の始まり

それは突然の出来事でした。夫は定年後フリーランスのような形で仕事をしながらゆったりとした生活をしていました。夫はそのとき65歳、私は62歳でした。脳梗塞を起こして脳外科のある病院に緊急入院したのです。

当時、私は国立病院の定年を迎えて京都の民間総合病院の看護部長と人材センターの部長をしていました。フルタイム勤務の現役です。一人娘はすでに結婚して夫婦二人暮らしでした。

夫が倒れたときも病院に送り届けて様子を見届けた後にはすぐに家に戻り、翌日は勤務につかねばならないような状況でした。若いころに脳神経外科勤務の経験もあったので夫の身に何が起こっているのかだいたい察しがつきました。そういえば脳梗塞の前兆はあったのです。数日前の日曜日に夫は私の車に乗って一人で出かけたのですが深夜になっても帰ってこず、連絡もつかなかったのです。翌朝になって家に戻っていたのでホッとしたのですが、どうもそのときに脳に障害が出ていたようです。運転席に大量の失禁の跡があり「これはおかしい」と思いました。この時すでに発症していたのでしょう。

病院に運ばれて検査をして前頭葉部分の梗塞がわかりバイパス手術をすることになりました。手術後は一時的に全身麻痺状態となったというのです。データを見せてもらうと尿崩症を起こしているようでした。補液のインとアウトのバランスがとれておらず、さらに梗塞部位が拡大してしまっていたのです。それを見て私は一瞬「しまった、手術はしないほうがよかった!」と思いました。手術前は普通に歩けていたのですから。「ほとんど回復することは無理だろう」と私は絶望的な気持ちになりました。病院で手術をすると聞いたとき、私は薬剤投与で少し様子を見るという選択肢もあるのではないかと看護師の経験上思ったのです。しかし、このとき私はあくまでも患者家族でしかありませんから病院を信頼して診療をお任せしていたのです。看護師であることと患者家族との葛藤を感じた経験でした。