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⑤在宅ケアの始まり

自宅に戻り在宅ケアがいよいよ始まりました。相変わらず私の仕事は忙しく介護との両立に苦労していました。勤務していた病院は私が看護部長に就任する際に離職率が高いという課題を抱えていました。そこで着任後は看護師の定着に注力して、4年連続途中退職者0というところまで成果が出つつありました。とは言え看護師長だけでも108名という大所帯です。すぐに退職するというわけにはいきませんでした。そこで「看護部顧問」という立場に変更をしてもらい勤務を減らしてもらうことにしました。それでも週4日のフルタイム勤務です。

ですから私の勤務日は、夫はデイケアにお世話になることにしました。朝の出勤前に迎えに来てもらい、夕方には送ってきてもらいます。夫を送り出してすぐに出勤して夕方には家に戻り迎えるという生活パターンが約2年続きました。これが私にとってはいちばんストレスのかかる時期となりました。

夫は定年までは貿易会社で営業をしていました。温厚で社交的、いつもニコニコしている人でした。娘はそんなお父さんが大好きでした。家では無口なほうで大きな声を出すようなことはありませんでした。それは在宅ケアがはじまっても私の前では同じだったので、私はてっきりデイケアでも同様に過ごしていると思っていました。

ところが徐々にデイケアから苦情が寄せられるようになりました。夫がデイケアで大声を出したり、他の人にちょっかいを出すというのです。そのとき私は高次脳機能障害が進行し症状が出ているのだとピンときました。それでもふだんの夫の姿からその姿は想像できませんでした。家では物事の理解もできておとなしくしているのです。しかし、実際にデイケアに行って夫のその姿を見ると驚きました。私の知る夫とはまったく別の姿をデイケアのスタッフの前では見せていたのです。