看護師さんとの会話が母の心を安定させてくれました

父の他界で精神的に不安定になった母

ビジネスマンA今年で74歳になる母。昔から真面目で世話好き。華道は師範級で、自宅教室に来てくれる生徒さんを大切にしていました。良くも悪くも完璧主義だった母の様子が変わったのは、2年前に夫を亡くしてからのこと。どこに行くのも一緒の仲良し夫婦だったので、突然の別れが受け入れられなかったようです。

安定剤が逆効果に

ある日、母はそれまでしっかり飲んでいた降圧剤を飲まなくなりました。理由を尋ねると、「私なんていないほうがいい」「こんな薬で命だけ長らえても意味がない」と言います。いつもは私の言うことだけは聞くのですが、どれだけ説得しても拒否。

その時期ぐらいから、ぼんやりしていたかと思うと突然声を荒げたり、感情の起伏が激しくなっていきました。自宅に引きこもることで足の筋力が衰えていくばかり。かかりつけ医に相談し、安定剤を処方してもらいましたが、そのことでさらに落ち込みが激しくなってしまいました。

思いを吐き出すことで回復に

このままでは本当に弱っていくだけだし、認知症も心配。地域包括支援センターに相談したところ、要支援の母が利用できるサービスとして、訪問看護ステーションを紹介されました。看護師さんがケアをしながら話を丁寧に聴いてくださることで、心の奥にある思いや不安をポツリポツリと語り始めました。

大好きな花の話をしたり、昔の写真を見ながら父との馴れ初めを懐かしく思い出したりする時間を持つことで、ようやく母親らしさを取り戻したようです。薬で心を落ち着けるのもひとつかもしれませんが、コミュニケーションの力で母を元気にすることができると知り、驚くと同時に、もっと母の心に目を向けてあげればよかったと反省もしています。