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⑥夫の人格が変わってしまった

自宅と違うデイケアの環境で夫はパニックを起こすようになりました。そうなると感情コントロールができなくなるのです。あまりにもデイケアの人に迷惑を掛けるので環境が合わないのかと一度、別のデイケアを手配し夫と体験見学に行きました。しかしそこでのランチタイムに夫はまたパニックを起こし、大きな声を上げて着席することもできずに立ったまま食べ始めました。そのあいだに周囲の利用者の方々にたいへんな迷惑を掛けてしまいました。これではそこにお世話になるわけにはいきません。何度もお詫びを重ねてなんとか慣れた環境の元のデイケアに戻ることになりました。

デイケアセンターには看護師は2名ほどで、他は介護福祉士やヘルパーの方です。高次脳機能障害についての知識をもっているスタッフもいないなかで夫はただの「こわい利用者」として映っているようでした。日中、隣にいる利用者に突然「あっちへ行け!」と怒鳴ったり、テレビを見ている人の横にいっていきなりチャンネルを変えたりもしたようです。スタッフも困り果てて夫を隔離するために個室を用意してくれたりしました。それでも突然大声を出して理性がなくなってしまうのです。私の知っている夫はもともと穏やかな性格です。その変容ぶりは高次脳機能障害から起因するものでした。スタッフがもう少しそれを理解していてくれたら対応の仕方もあったかと思います。だから施設を選ぶ際にはそういった視点も必要だったと今では思います。私が看護師であることも知っているのでスタッフからは「なんとかしてください」と毎回のように言われました。

介護生活のなかでじつはこれが私にとっては最も大きなストレスでした。夫の世話を家庭内でする分には自分の問題として受け止めることができました。しかしお世話になっているデイケアのスタッフにこれだけ負担を掛けているということは毎回の送り迎えの際に痛感せざるをえませんでした。毎日毎日来るこの苦情の連絡に私の心は悲鳴を上げるようになっていました。


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