難病看護

難病 (指定難病) と診断された方・難病のため医療的ケアが必要な方への看護

広い意味における難病には、例えば癌や認知症など、治療が難しい病気が含まれます。ただ、ここで言う難病とは、国から指定難病 (特定疾患) として指定された病気を指します。原因不明で治療法がなく、長期的な付き合いが必要かつ、希少な疾患である (その病気を持つ方が全国的に少ない) ものが指定されています。

昭和40年代、スモンという病気から始まった国の難病対策は、徐々に対象疾患が増やされ、現在333疾患が指定されています (令和元年7月以降)。できるだけ多くの方が支援を受けられるよう、少しずつ法整備が進められてきています。難病指定医から指定難病と診断された方は、難病法に基づき「特定医療費 (指定難病) 助成制度」と呼ばれる医療費補助が受けられます。

一方で、難病と診断された方の多くは、身体的な負担や精神的ショックを抱えます。「これから自分がどうなってしまうのか」「何をしていったらいいのか」「治る方法はないのか」など、様々な悩みが出てきます。また、難病の多くがなんらかの介護を必要とすることもあり、診断を受けた方のご家族も大きな不安や負担を感じることが多いでしょう。

加えて、難病治療は特殊な治療法や薬剤の使用や、長期的な治療の必要性が生じることがあります。例えば、難病の中で最も数の多い「パーキンソン病」という病気では、病状の進行に合わせて「抗パーキンソン病薬」と呼ばれる薬剤を使用します。抗パーキンソン病薬はパーキンソン病の症状に対して有効な薬剤である一方で、効きすぎによる副作用もあります。そのため、薬剤の効果と副作用のバランスをみながら、適切に薬剤を調整していく必要があります。もちろん、実際に薬剤を調整するのは医師の役割ですが、日々の症状の観察を看護師が行い、サポートしていきます。また、パーキンソン病では特有の歩行障害や振戦 (ふるえ) に加え、なかには睡眠障害や幻覚などの症状がみられる方もいます。症状により、日常生活に支障が出てくることも少なくありません。そういった方々の生活のサポートを、看護師をはじめとした多職種とともに取り組んでいく必要があります。

このように、難病とともに生活されていく方には、治療など医療的な部分から、心理的、身体的な部分まで様々なサポートが重要となります。

どんなことをしてくれるの?

精神的サポート

突然難病と診断されると、どんな方でも驚きや不安を感じます。特に難病と診断された方は、先の見えないことへの不安を大きく感じると言われています。また、すでに長く難病と付き合いながら生活している方でも、進行する症状から新たな不安や困りごとが出てくることも少なくありません。

ななーるでは、難病とともに生活されていく方の不安や困りごとを伺いながら、今後の生活がイメージできるようサポートし、必要に応じて主治医や医療機関との連携、社会資源の調整をおこなっていきます。難病を持ちながらも、その方らしく生活できるよう支えていきます。

医療的ケア

難病は、治療が難しく長期的な付き合いが必要となります。様々な症状を抱えながら生活していくこととなります。また、前述のように、特殊な治療法や薬剤を使用する場合も多くあります。なかには、機械で呼吸をサポートする「人工呼吸器」などの高度な医療機器を使用することがあります。一昔前までは、人工呼吸器を装着した場合、入院が基本となり、在宅で生活できるものではありませんでした。しかし、この20年ほどで、人工呼吸器を装着して在宅生活を送る方が徐々に増加しています。

ななーるでは、難病の症状の程度や変化を観察しつつ、その症状と付き合いながら生活するためのサポートをおこないます。また、難病における特殊な治療や薬剤を使用する方々の、在宅生活における注意点などの指導や助言をおこないながら、異常の早期発見・対処に努めます。

ご家族のサポート

難病とともに生活される方のご家族も、本人同様に様々な不安や負担が生じると予想されます。進行していく難病を抱えるご家族を介護することで「どうやって介護したらいいの?」「自分だけじゃ介護できない」など、様々な悩みや心配を感じることがあるかと思います。

ななーるでは、難病とともに生活される方のご家族の悩み事や介護負担などを伺いながら、必要に応じて社会資源の調整などをおこなっていきます。難病を持つ方とその家族全体が、活き活きと生活できるようサポートしていきます。

 

石川 武雅(日本難病看護学会認定 難病看護師)
私は難病、特に神経難病を持つ人々の支援について研究をおこないながら、訪問看護に携わっています。疾患とともに生活する人々にとって、地域でのサポートは必要不可欠であり、特に難病を持つ人々は医療依存度が高いことも多いです。そういった方々が在宅で生活するうえで、訪問看護の役割は大きいと感じています。難病支援は、疾患の希少性や特殊性からまだまだ未開拓な部分が多い分野。臨床現場と研究双方の視点から、難病を持つ人々が安心して生活できるよう取り組みたいと思っています。